今から数年前。私と夫の物語は、武器を担いだゲーム画面の中から始まりました。
私たちの出会いは、共通の友人からの紹介。「モンハン(モンスターハンター)を一緒にやろう」と誘われ、初めて繋いだスカイプの呼び出し音。あの独特の呼び出し音が鳴るたびに、少しだけ胸がドキドキしたのを覚えています。
顔も知らない、どこに住んでいるかも知らない。でも、画面を開けばそこには同じ目的を持った「仲間」がいました。
クエストで見えた、彼の「人柄」
最初は緊張していた私ですが、一緒に狩りに出かけるうちに、不思議とリラックスして話せるようになっていきました。
ゲームって、意外とその人の「素」が出るんですよね。 私が操作をミスしてピンチになった時、彼は決して怒ることなく、スッと助け舟を出してくれました。難しいクエストをクリアした後にスカイプ越しに聞こえる「ナイス~!」という笑い声。
画面越しに共有する時間は、いつしか私にとって、何物にも代えがたい大切な居場所になっていきました。
焼肉オフ会、彼からの「告白」
そんな「ゲーム仲間」だった私たちの関係が大きく動いたのは、ある日の焼肉オフ会でした。
実際に会う前から、「絶対に落とします。」と彼に画面越しに伝えられていて、「大事な告白は、ちゃんと会った時にしたい。」そう言われました。
いつも画面越しに一緒に遊んでいた仲間たちと、リアルで会って美味しいお肉を囲む。楽しくて賑やかな時間の裏で、私はどこか「その時」を意識して、ずっとソワソワしていました。
そして、宴の終わり。二人きりになったタイミングでついに彼が言葉にしてくれた、真っ直ぐな告白。 画面越しにずっと感じていた彼の優しさや誠実さが、目の前の彼からもそのまま伝わってきて、「この人となら、ゲームの中だけでなく、現実のどんな困難も一緒に乗り越えていける」 そう確信しました。信頼関係は、もう何時間もの狩りを通じて積み上がっていたのです。私は迷わず、彼と同じ未来を歩む道を選びました。
形を変えて続く、二人の「クエスト」
それから月日が流れ、夫が療養生活に入った今、私たちは別々の場所で過ごしています。
一緒に暮らせないもどかしさや、寂しさはもちろんあります。 けれど、そんな時に思い出すのは、あのスカイプで繋がっていた日々のこと。直接会えなくても、声を聞き、同じ時間を共有することで心は繋がれる……それを私たちは、出会った頃からずっと知っていました。
今の私たちのコミュニケーションは、ライン通話がメインです。 お互いの体調を気遣いながら、ゆっくりと、穏やかな時間を共有しています。
最近では、たまに二人で「マインクラフト」をプレイすることもあります。 かつてのモンハンのように激しいモンスターを追いかけるのではなく、ブロックを積み上げたり、のんびり世界を歩いたり。そんなゆったりした時間が、今の私たちにはちょうどいいんです。
「今日はこんなものを作ったよ」「あそこにこんなのがあったよ」 ライン越しに聞こえる彼の声は、あの頃と同じように温かく、私の心を落ち着かせてくれます。
今は少し、人生という名の難しいクエストに挑んでいる最中なのかもしれません。 でも、あの時培った連携プレイがあれば、どんなに高い壁もきっと越えていける。いつかまた、隣で一緒に笑い合える日を目指して。私たちは今日も画面越しに、一歩ずつ丁寧に、二人の物語を歩んでいます。

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